渡辺 学

わたなべ まなぶ
日本共産党川崎市議会議員(幸区)
活動日誌

北秋田市:奨学金等返還支援助成金事業、就業資格取得支援助成金制度  藤里町: 福祉の拠点「こみっと」で「生涯現役を可能にするまちづくり

2017年4月27日

2017年4月17秋田県北秋田市、4月18日に秋田県山本郡藤里町を視察してきました。

北秋田市

奨学金等返還支援助成金事業、就業資格取得支援助成金制度

北秋田市は、人口33,265人、14,188世帯(2017年3月末)で減少が続いている。2014年の市内定着率は45%(30歳人口で15年前の15歳人口と比較)と低く、進学や就労等で若年者の流出が多く、その後も地元に戻ってこない現状があるとのことでした。

こうした中で、さまざまな移住、定住施策を進めています。

1.「北秋田市奨学金等返還支援助成金」事業

奨学金返還支援を実施している自治体が増えていますが、今回は北秋田市の「北秋田市奨学金等返還支援助成金」事業について視察を行いました。

北秋田市は、2015年度に開始したもので奨学金の一部を助成し将来を担う若者を応援することで移住、定住の促進を図る施策として行われています。

助成要件は北秋田市に居住(住民登録)し、通勤可能な勤務地で就労する人で奨学金の返済開始または返済中の45歳未満の方を対象にしています。市外からの転入も歓迎して、市外の居住実績が1年以上としてU・Iターンを増やすための制度としています。説明では地元新卒者の多くは首都圏へ就職するがそこでの経験、技術を地元で生かして欲しい。また、首都圏からの移住も増やして地域産業の発展を促進して行きたいとのことでした。

助成期間、助成額は交付開始から最大60カ月分(5年間)で、国家資格に基づく就労の場合は年返還額の1/2(上限額年20万円)、それ以外の就労の場合は返還額の1/3(上限額年13万3千円)です。

2017年度からは秋田県が同様の支援制度を開始しました、県の制度は最大3年間、助成額は一般区分で年返還額の2/3(上限額年13万3千円)、未来創生区分(特定5業種に勤務し理系大学卒+外国語資格取得の方)で10/10(上限額年20万円)としています。

北秋田市の制度と秋田県の制度を併用または連動して助成を受けることも可能で、併用の場合は奨学金返還金額から県助成額を引いた残りの金額の1/2または1/3を市から受けることが出来るとのことです。連動の場合は最大8年間の助成が受けられます。

北秋田市の本制度の申請者数は2015年度5件、2016年度11件(内新規申請6件)については、成果が出るまでは時間が掛かると考えている、手探りの状況もある。移住時の雇用、住まいや地域との人間関係(コミニティー)の課題がある、対応した体制づくりを進めて行きたいとのことでした。

2. 北秋田市資格取得支援助成金制度

北秋田市では、2014年10月から求職者の就業機会拡大を図るため、就業に有利となる資格取得に対して助成を行う就業資格取得支援助成金制度を開始し、2015年5月からは離職防止及び地元定着の向上を目的に、対象を求職者、学生、事業所従業員に拡大した「北秋田市資格取得支援助成金」へ改正し、さらに対象年齢を65歳までに拡大(2016年4月)して現在に至っています。補助率は資格取得に掛かる費用の1/2以内(補助上限10万円以内)としたもので、当初の利用者1名から2016年度は59名と利用件数が増えているとのことでした。

その他にも、中小企業支援、正規雇用の拡大支援として、

●「工業振興促進条例」

この事業は、企業誘致と企業の事業拡大を支援することで、産業振興と雇用拡大を目的に設備投資を行い雇用拡大を行った企業に対して、新設は3,000万円の設備投資で5人以上の雇用拡大、増設は3,000万円の設備投資で3人以上の雇用拡大で新規常用雇用者は一人について年10万円(新卒者及び市内転入者は20万円)を3年間支援するものです。

2015年度は11名(110万円)、2016年度は22名(203万円 年度途中の方有)の支援を行ったとのことでした。

●「北秋田市雇用促進交付金」

民間事業の活性化と多様な雇用の場拡大により、定住率維持・向上を目的に、前年度末の正規雇用者数を超える雇用をした事業所に、正規雇用者1人について年10万円を3年間の支援を行うもので、2015年度は16名(143.2万円)、2016年度は28名(254.8万円 年度途中の方有)の支援を行っています。

大学生の奨学金利用者は5割を超える状況で、百万単位、数百万円の奨学金返済を背負って卒業し返済に苦しんでいる若者います。視察は北秋田市の移住、定住の促進を図ることを目的とした「北秋田市奨学金等返還支援助成金」事業ですが、奨学金返還を助成し将来を担う若者を応援するという点で、また 中小企業支援施策として実施している雇用促進交付金制度は雇用確保と中小企業応援の点から本市でも参考になる施策と思います。

 

藤里町

福祉の拠点「こみっと」で「生涯現役を可能にするまちづくり

秋田県山本郡藤里町で取り組まれている「生涯現役を可能にするまちづくり」を視察してきました。いま全国から注目されている事業で町社会福祉協議会の菊池まゆみ会長から説明を受け、拠点となっている施設「こみっと」を見学してきました。

秋田県藤里町は「白神山地」(世界遺産の認定)のふもとに位置し、その観光ルートの入り口にあたる緑豊かな、人口3,448人(2017年3月)の人口減少、高齢者率45.1%と高齢化が進んでいる町です。

 この町の「生涯現役を可能にするまちづくり」は、“町民すべてが生涯現役を目指せるシステムを、老いも若きも、障害があってもなくても、参加できる人づくり。その力を最大限活かせる仕事づくり。過疎化の町ですべての町民がいきいきと輝いて暮らす町づくりは、若者にとっても住みやすい町になる”を基本として進められています。

 そもそもこうした取り組みに至った経過は、2006年、介護予防にあたっている介護福祉士が地域から“家に引きこもっている若者がたくさんいるから調べて欲しい”等の相談。さらに「あそこにもいるよ、あそこにもいるよ」と情報が寄せられ、これをきっかけに、いったい誰が、どこに閉じこもっているのかを調査を始めたことから始まります。

2010年2月から2011年8月にかけての「ひきこもり等訪問調査」で、若者だけでなく、中高年も多く18歳から55歳までの町民1293人の8.74%の113人が様々な理由で長年、仕事に就けない状態で自宅などにひきこもっていることが明らかになりました。

「あなたは引きこもりですか」と聞いても、多くの場合は否定される、そもそも引きこもりの定義自体が各自の解釈で大きく違うということで、間口を広げれば、本当は引きこもっている人も出てきやすい、ひきこもりとくくるのではなく、障害者や高齢者を含め、全町民を対象に居場所がない、だったらつくろうというのが「こみっと」設立の原点とのことで、自分の役割がなければそれは居場所ではないという視点から、藤里町を支える人づくり、仕事づくり、若者支援事業を行っているとのことです。

福祉の拠点「こみっと」は、2010年4月にオープン。各種の共同事務所、サークル室(日中活動支援室)、お食事処(就労支援)、調理室(就労支援)、会議室(機能訓練室)、相談室、サークル室などが整備されています。113人の方々が14年度末になると25人に、77%余りも激減したとのことです。「こみっと」による直接的・間接的な支援を受け、多くの方が自立できたことを意味します

現在、働くかたちと働き方を登録しそれに沿った仕事の提供(プラチナバンク・シルバーバンク事業)、地域のめぐみで特産品の開発、製造販売(白神まいたけキッシュ、こみっとうどん)、食のイベントを開催等に自治会、老人クラブ、婦人会など多様な団体と多くの方が企画、運営に参加しています。支える人、支えられる人の福祉施策ではなく、「福祉のまちづくり」から「福祉でまちづくり」で地方創生を目指しています。

藤里町の取り組みは、自分の役割がなければそれは居場所ではない、自己肯定感を育み、地域で、社会で認められることでの達成感を生み出しています。こうした視点での事業は自治体の大小に関わらず必要で生かしていきたいと思います。

渡辺 学

ブログ新着記事

  • ブログ過去の記事

  • facebook
  • 赤旗新聞の申しこみはこちら

リンク

PAGE TOP